日 時:2020年6月30日(火)日本時間16:00~19:30
場 所:ビデオ会議 参加人数:UNWTO加盟国29か国・加盟地域及びUNWTO賛助加盟員等から150名
第32回東アジア太平洋地域及び南アジア地域合同委員会は、スリランカで開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、ビデオ会議という形で開催されました。UNWTO加盟国29か国・加盟地域及びUNWTO賛助加盟員等から150名を超える参加があり、両地域が安全で持続可能な形で観光を再開するための方策に焦点を当てた議論が交わされました。
冒頭のスリランカの観光大臣及び、本委員会の議長及び副議長の挨拶の後、UNWTOから2つのプレゼンテーションがありました。
初めにUNWTO法律顧問のアリシア・ゴメス氏が「観光客の国際的保護:顧客マインドの再構築(International Protection of Tourists :Rebuilding Consumer’s Confidence)」をテーマに、新型コロナウイルス感染症による旅行のキャンセルに伴う返金条件や消費者保護に関する国際基準を整備することが、喫緊の課題であると述べました。また、これに対しUNWTOは来年のUNWTO総会において、観光客の国際的保護に関する条約を提案すべくワーキンググループを結成し、議論を進めていると述べました。
次にUNWTOイノベーション・投資・デジタル変革部のナタリア・ボヨナ氏が「投資・改革・技術(Investment, Innovation and Technology)」をテーマに、UNWTOと国際金融公社(IFC)が共同で実施する「グリーンファイナンスメカニズム(Green Finance Mechanisms)」に関するプログラムについて、①情報収集プログラムの特定(identifying aggregators) ②認証・認定(accreditation and certification)③ 持続可能な投資(facilitating sustainable investment)の促進の3つのテーマで構成されていると紹介しました。また、このプログラムは、新型コロナウイルス感染症による現在の危機から回復するための刺激策を実施しながら、すべての観光のバリューチェーンにおける持続可能性を向上させるためのグリーンファイナンスの促進を目指すものであり、特にホテルセクターにおける社会的インパクト投資(Social impact investment)の重要性に焦点に当てていると説明しました。
また、UNWTOの事業報告においては、ズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長が、新型コロナウイルス感染症におけるUNWTOの対応策として、関係国連機関及び各国、民間部門から構成される観光危機管理委員会を設立し、同感染症に対応する観光セクターを主導していることや、同委員会によって、観光の回復に向けた「グローバル・ガイドライン」が5月28日に発表されたことについて述べました。
その他、新たにアジア太平洋部の部長に就任したハリー・ファン氏からは「新型コロナウイルス感染症からの観光回復策」や同感染症からの観光セクターの復興を支援するためのコンペティション「観光の課題を解決するためのチャレンジ(Healing Solutions for Tourism Challenge)」等のUNWTOの取組について言及しました。また、今後(10月~12月)のイベントとして、「第14回UNWTO/ PATA 観光動向と展望に関する国際会議(中国・桂林)」及び「ツーリズムEXPOジャパン2020(日本・沖縄)」、「世界観光経済フォーラム(マカオ)」が開催予定であると述べました。
続いてUNWTO駐日事務所本保芳明代表が当事務所の活動内容として、現在、進めている太平洋島嶼国調査やエビデンス・ベースの持続可能な観光地マネジメントに関する手引書及び観光危機管理に関するガイドラインの策定、専門機関の特権及び免除に関する条約の附属書XVIIIの締結に伴う当事務所の法的地位取得による体制強化等について報告しました。
UNWTO加盟国の新型コロナウイルス感染症における政策課題に関する報告において、観光庁の高科淳国際観光部長から、日本の観光関連事業者の事業継続と雇用維持への支援策や感染拡大の予防を図るためのガイドラインの策定等の取組について報告がありました。また、UNWTO賛助加盟員及び関係団体の報告として、日本からは株式会社JTB総合研究所 コンサルティング事業部の熊田順一部長から同研究所における持続可能な観光に関する取組について説明がありました。
最後のアジェンダとして、第33回の東アジア太平洋地域及び南アジア地域合同委員会の開催地はスリランカ(コロンボ)に決定しました。
UNWTOズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は会議の中で、「アジア太平洋地域は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けた最初の地域でした。国際観光客到着数の突然かつ予期せぬ減少は、経済に打撃を与え、多くの雇用を危機にさらし、とりわけ観光に依存している国々における持続可能な開発の進展を脅かしました。観光を再開するに当たり、国際的な調和は、信頼を構築し再び旅行を始めるための信頼を人々に与える鍵です。」と述べました。
閉会挨拶として、同事務局長は、「現在、すべての国で旅行規制が実施されている中で、国際的な協力がこれまで以上に必要です。UNWTO加盟国は観光セクターと他のセクター間の連携を促進し、何百人もの生計が危機にさらされているという観光の課題に対処する際に相乗効果を生みだせるよう取り組むことが必要です。観光業界は大きな課題に直面していますが、これは大きなチャンスにもなり得ます。」と述べ、締めくくりました。