所長からのご挨拶

世界観光機関(UN Tourism)のアジア太平洋地域事務所(RSOAP)は、1995 年に開設されて以来、アジア太平洋地域における観光の振興に向け、30 年に亘って活動してまいりました。我々の活動に対する皆様のご支援に、心より感謝申し上げます。

世界の観光は、新型コロナ感染症による痛手を克服し、更なる発展に向けた新たな局面を迎えようとしています。コロナ禍がもたらした大きな環境変化を的確に捉え、関係者が協力して新たな課題に挑んでいくことが、今こそ必要です。

UN Tourism の取り組む課題のひとつに『観光産業の発展と地域経済への還元』があります。観光の持つ経済的潜在力が認識されつつある中、地域が観光資源の「有効活用」に挑戦し、その恩恵を享受・還元していくことはとても重要な取組みです。成功事例の共有等を通じて、一層の推進を図っていきたいと考えます。

また、観光が健全に発展し続けるには『観光の持続可能性(サステナビリティ)』も重要な要素になります。環境への負荷低減にとどまらず、観光資源の維持管理・保全が、持続可能な観光にとって大きな意味を持ちます。またオーバーツーリズムが指摘される中、地域コミュニティとの共生も、向き合うべき重要な課題です。

さらに、最近注目を集めているのが『観光の強靭性(レジリエンス)』です。自然災害のみならず、感染症の蔓延や経済危機等の難局に直面した際に、観光への悪影響を如何に最小限に食い止めるか、一刻も早い復興を実現するか、また普段からどんな備えを講じるべきか、といった点は、今まさに検討が求められている新たな課題といえます。

RSOAP では、こうした課題を踏まえつつ、UN Tourism 本部と連携を取りながら、世界の観光の動向、統計・研究成果や様々な取組に関する情報を関係者の皆様と共有するとともに、アジア太平洋地域から世界に向けた情報発信を推進することによって、世界の観光産業の発展に貢献していきたいと考えております。

今年、UN Tourism は設立 50 周年。節目の年を迎えて、ますます取組に力を入れてまいりますので、皆様の一層のご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

UN Tourismアジア太平洋地域事務所 所長 金子正志